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■風生 / 奥谷 博 (1934- )

風生 / 奥谷 博
制作年1991年
画法油彩
サイズ157 x 146cm

奥谷 博 (1934- )

1934年、高知県に生まれる。東京芸術大学で林武に学び、第33回独立展で独立賞・須田賞を、第1回昭和会展で昭和会賞を受賞して若手有望作家として注目を浴びました。やがて、芸術選奨文部大臣賞や宮本三郎記念賞を受賞、日本芸術院会員にも推され、独立美術協会を中心に幅広い活躍を続けています。
奥谷は、はじめ林武の影響が強く見られる厚塗りで重厚な作風でしたが、やがて薄塗りによる透徹したリアリズムと鮮烈な色彩の作風へと変貌を遂げた後、人間の生と死をテーマとする黙示録的な作品を展開しています。
この作品は第13回十果会展に出品されたものです。おそらくは作者の記憶にある郷里の海に由来する今碧の海とそこに生まれた潮騒、渦から生じた風とその風に乗って渦の上を旋回する海鳥、そしてそれをどこかしら非現実的な崖上から眺める二人の人物。遠い記憶から生じた現在(いま)の海の景色を別の時点、過去からあるいは未来から眺めているとでもいったらいいでしょうか、まるでタイムスリップでもおこしたうような不思議な感覚に捉われます。作品名の「風生」とは風が起こること、風が生じることを意味しますが、「風」という生命の誕生を、この世ではないどこか別の地点から眺める二人の若者は、この光景からなにを感じているのでしょうか。とても示唆に富む作品です。