■ヴェトゥイユ、水びたしの草原 / クロード・モネ (1840-1926)
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制作年 | 1881年制作 |
画法 | 油彩、キャンバス |
サイズ | 61.7×74cm |
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《ヴェトゥイユ、水びたしの草原》は、印象派を代表する「光の画家」、クロード・モネが、ヴェトゥイユに住んでいたときに制作した作品です。
ヴェトゥイユは、パリから北西に約50キロ、セーヌ河の湾曲部にある小さな村です。1878年、経済的に困窮したモネはパリを逃れ 1883年までこの地に暮らしました。ヴェトゥイユに魅せられ名作を遺していますが、モネにとっては悲痛な思い出の地でもありました。またこの時代は人生の転換期でもあったのです。
モネが第1回印象派展に出品したのは1874年のことでした。彼の出品作《印象・日の出》というタイトルが、印象派という名称の由来になったことは有名です。1876年の第2回印象派展には、日本の衣装を着けた妻カミーユをモデルにした《ラ・ジャポネーズ》を出品しました。モネはカミーユをモデルに数多くの名作を遺しています。そのカミーユが32歳の若さで他界したのが1879年、ヴェトゥイユに住んでいるときのことでした。このときのモネは、経済的に貧窮の極みにあったと言います。
《ヴェトゥイユ、水びたしの草原》は、カミーユの死から2年ほどが経ち、絶望と悔恨、また経済的貧窮からも脱しつつあった時期に描かれた作品です。空や水辺の色彩、また葉の落ちた木の造形には、かつてモネが描いたような、圧倒的な光の充溢や躍動的な生命感は抑えられています。そのかわりに静謐な安定感、あるいは諦念的な深い情感が漂っています。この絵をヴェトゥイユで描いたのち、モネは、彼の後半生の代表作となる連作『睡蓮』の舞台となった、ジヴェルニーの地に根を下ろし、充実した創作活動を晩年まで続けることになるのでした。