《フジタの挿画本の世界》
フジタのあまり知られていない仕事に、豪華本の挿絵がありました。
木版、銅版、石版の技法で、約50冊を残しました。
乳白色の裸婦を描いた、しなやかで正確で、毛髪のように細く、そして鋭い・・・
共通の「線」がそこにはあります。
展覧会では、そのなかでも代表的な
「お梅さんの三度目の青春」 ピエール・ロティ/文 1926年刊
「御遠足」 トマ・ローカ/文 1927年刊
「海龍」 ジャン・コクトー/文 1955年刊
の3冊をご紹介しています。
「お梅さんの三度目の青春」
フランス海軍士官だったピエール・ロティが世界各地に巡航し、2度目の日本滞在の印象を日記風にまとめています。
再訪した長崎が、フジタにより異国情緒たっぷりに描かれています。
「御遠足」
時は1922年(大正11年)、ところは上野公園の万国平和博覧会。一番人気の水上滑走艇の上で、西洋人の男が日本の娘に声をかけるところから物語は始まります。
娘をこんど江ノ島へ行こうと誘い、居合わせた男が、それなら私が・・・と御遠足は始まる。
外人様をもてなすのに必死の日本男児と、娘と二人きりになりたい西洋の男・・・
そして江ノ島に行けて喜ぶ娘。その一日を日本の風習や慣習をまじえて物語はすすむが・・・
意外な展開が待っていたのです。
「海龍」
「波と泡は、押し寄せては引く、雪の富士山である」と始まるこの本は、ジャン・コクトーが1930年代に世界一周旅行で訪れた日本の思い出を、詩情豊かに綴った物語です。
産業が発展してゆく西洋を哀しみ、日本の優美さ、物腰、香り、そして究極の繊細さを「奇跡」と呼んでいます。
尾上菊五郎の鏡獅子を観、相撲を観戦し、吉原遊郭を訪れ、道々目にする日常の光景に感嘆するのです。
コクトーの案内もしたフジタが、鋭い線で描ききっています。 (KK)
それぞれの挿画本の挿絵作品は額装され、すべて御覧いただけます。