笠間日動美術館:学芸員便り

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■「没後25年 鴨居 玲 終わらない旅」開催の御案内

2010年03月23日

没後25年、いまだ高い人気を誇る画家、鴨居玲の展覧会が、河口湖美術館を皮切りに横浜そごう美術館、北九州市立美術館に巡回されます。是非、ご観覧ください。

■第1会場=河口湖美術館 
 401-0304 山梨県南都留郡富士河口湖町河口3170 電話0555-73-2829
会期=2010年4月10日(土)ー6月13日(日)

■第2会場=そごう美術館
 220-8510 神奈川県横浜市西区高島2ー18ー1 そごう横浜店6F 電話045-465-5515 
会期=2010年7月17日(土)ー8月31日(火)

■第3会場=北九州市立美術館・分館 
 804-0024 福岡県北九州市小倉北区室町1-1-1 電話093-562-3215
会期=2010年9月11日(土)ー10月24日(日)

なお本カタログは当館ミュージアムショップでまもなく販売いたします。(定価2,100円)

■笠間日動美術館では12月初旬から来年3月下旬にかけて
 「没後25年 特集展示 鴨居玲」を開催予定です。

■展覧会内容

もしかしたら不確かなままでしかないのかもしれない、わたしたち人間のそれぞれの生。あるとき我執を離れて省みれば、はて、生きる意味とは何なのか、そも自分は何者なのか?。
 こうした問いはおそらく昔も今も、誰しもが心に秘めている普遍的な疑問なのではないでしょうか。それを絵筆で問い続けたひとりの画家がいました。その名は鴨居玲。没してはや25年、いまなおその作品は人の心を惹きつけてやまないのです。
 新聞記者の父のもとに生まれた鴨居玲は、金沢で幼年期を、のちに父の転勤にともなってソウル、大阪で少年期を過ごしました。戦後まもない時期に新設された金沢美術工芸専門学校(現在の金沢美術工芸大学)で画家宮本三郎(1905-1974)の教えを受け、大阪、神戸、ヨーロッパ、南米、と各地を遍歴しながら活動。41歳の時、当時画壇の登竜門だった安井賞を受賞して一躍脚光を浴びます。その後スペイン中部の小村、またその後に神戸、と居を移しながら人気作家としての道を歩みますが、高い評価と賛辞をうけるいっぽうで、生きるがゆえの懊悩にさいなまれてでしょうか、晩年には周囲に自死を予告して未遂するなどの奇行を繰り返すようになり、57歳の時、ついに自らの意思によってその人生を終えます。
 疲れ果てた廃兵、夢とうつつの境を失った酔っぱらい、虚空にたたずむ建造物、皺にまみれた醜い老人....、暗く重い画面に照らし出されるように劇的に描かれた人物たちの、眼窩の影に隠れた視線の向かう先を読むことはできない。この画家が描く人物は実はほかでもない、モデルに仮託した自画像。そして、人々が彼の作品に共感をおぼえるのは、それがわたしたち自身の姿と重なるからなのです。
 初期から最晩年に至る油彩画を中心に約80点の作品が展示されます。ご期待ください。