笠間日動美術館:学芸員便り

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■「幻の大津絵と東海道五拾参次」の作品紹介 その6

2022年02月11日

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大津絵「『古筆大津絵』雷と太鼓」笠間日動美術館蔵
「幻の大津絵と東海道五拾参次」で展示している中から、古筆大津絵より「雷と太鼓」、「鬼の行水」、「鬼の三味線」、をご紹介いたします。

鬼を扱った画題は、大津絵の中で10種類程確認されています。
「鬼の念仏」をはじめとする画題に描かれ、大津絵独特の人気のテーマでした。
今回は展示している大津絵から『古筆大津絵』の「雷と太鼓」、「鬼の行水」、「鬼の三味線」を紹介いたします。
どれもユーモアのある姿で、私たちを楽しませます。

■大津絵「『古筆大津絵』雷と太鼓」笠間日動美術館蔵
雷様である鬼が雲の切れ間から身を出し、水面に落としてしまった太鼓を錨で吊り上げようとしています。錨に結ばれた紐は鬼の褌とされており、人々に恐れられていた「雷様」を面白おかしく描いています。

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大津絵「『古筆大津絵』鬼の行水」笠間日動美術館蔵

■大津絵「『古筆大津絵』鬼の行水」笠間日動美術館蔵
鬼が褌を竿にかけ、風呂桶に入ろうとしたシーンを描いています。体を洗い、心を洗わない人への諷刺といわれています。周りに書かれた道歌のひとつには

鬼じゃとてなどや
ほとけになら
ざらん
こころの
垢を
あらい
ながせば

と詠まれています。

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大津絵「『古筆大津絵』鬼の三味線」笠間日動美術館蔵

■大津絵「『古筆大津絵』鬼の三味線」笠間日動美術館蔵
盃と徳利を前に鬼が三味線を弾く姿を描いた作品です。楽しげな音楽にお酒で相手を酔わせ、隙が出たところで悪さをしようと狙っています。三味線を弾く鬼の姿はユーモラスな姿ではありますが、「うまい話には裏がある」ような現代にも通じる道徳的な教訓であります。


*1月2日(土)から3月6日(日)まで開催中の「幻の大津絵と東海道五拾参次」は現在後期の内容を展示しております。(袋井-京都 三条大橋まで)

展覧会の詳細については
PCから→ https://www.nichido-museum.or.jp/exhibition.html

スマートフォンから→ https://onl.la/f9LndqW
(T.T)