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笠間日動美術館 企画展履歴

館蔵品による特集展示 『エピソードで綴る C夫人肖像画』
併設展示「音楽の彩り、マティス(ジャズ)&ホックニー(ブルー・ギター)」

2006年03月19日〜2006年04月09日

主 催財団法人 日動美術財団
会 期平成18年3月19日(日)〜平成18年4月9日(日)
会 場笠間日動美術館 企画展示館
開館時間午前9時30分より午後5時(入館受付は4時30分まで)
休館日毎週月曜日
入館料大人1,000円、大学・高校生700円、中学・小学生500円、65歳以上800円 (20名以上の団体は各200円割引)

このたび笠間日動美術館では『エピソードで綴る C夫人肖像画』、併設展示『音楽の彩り、マティス(ジャズ)&ホックニー(ブルー・ギター)』を開催致します。

『C夫人肖像画』は、2003年に同タイトル書籍の出版記念展として開催、好評をいただきアンコール展として再公開の運びとなりました。今回は梅原龍三郎、アンディ・ウォーホル、ジャコモ・マンズーなど国内外の絵画作品および彫刻作品など70点に、思い出のエピソードを添えてご紹介致します。
本展の肖像画は当館副館長、長谷川智恵子を描いたものです。19歳で画商の家に嫁ぎ3人の子を育て、また自らも画商となり世界を飛び回る日々をおくっています。この歳月における巨匠たちとの交流の思い出は、肖像画となってのこされました。1964年、木下孝則「花嫁像」で幕は開けられます。以降、純粋に女性モデルとして、時に母として、また画商としてカンヴァスの前に座り、2003年フランスの写真家アントワーヌ・プーペルによるデジタルフォト作品まで 40年の歳月は流れます。個性的な巨匠たちによってさまざまに描き分けられた一人の女性の肖像画には、それぞれ心温まるエピソードがちりばめられています。
『音楽の彩り』では、版画によるマティスとホックニーの軽快な世界が展開されます。巨匠たちの音楽の饗宴を、併せてお楽しみください。

『エピソードで綴る C夫人肖像画』 出品作家

木下孝則 齋藤三郎 糸園和三郎 鴨居 玲 三雲祥之助 荻 太郎 梅原龍三郎 原 精一 アンディ・ウォーホル ジャン・カルズー 田村孝之介 舟越保武 桐野江節雄 小磯良平 ヤコブ・アガム ジャコモ・マンズー 福井良之助 福本 章 平野 遼 デビッド・D・ダンカン 石垣定哉 松樹路人 織田廣喜 ピエール・クリスタン アンドレ・ブラジリエ 筧 本生 佐藤泰生 奥谷 博 アントワーヌ・プーペル ラストギン・アレキサンドロビッチ

『エピソードで綴る C夫人肖像画』 出品作品よりご紹介
アンディ・ウォーホル 「ウーマン」 1975年 (東京冨士美術館所蔵)、 「C夫人像」 1975年 (笠間日動美術館所蔵)

彼はじっと私を見つめていた。それから、私に顔の向きを右や左に変えさせ位置を決めた。ポラロイドカメラを取り出して「写真を撮るから、そのままでいてください。目はこっちを向いて」と言う。五十枚は撮ったと思う。「これでいい」「えっ、デッサンもしないのですか」「私はこの写真で十分なのですよ」デッサンもしない、カンヴァスの前にも座らせない、モデルとして画家となんの交流もない。今までの画家とは違っていた。何か狐につままれたような一瞬のことだった。

木下 孝則 「花嫁像」 1964年

結婚式を挙げてからすぐに私は妊娠した。モデルに通っているうちに、お腹が大きくなってきて、最後はウェディングドレスの背中のジッパーが上がらなくなってしまった。「どうしよう」先生は「大丈夫だよ。ちゃんと書いてあげるから」と慰めてくれた。

鴨居 玲 「長谷川智恵子像」 1972年

当時、鴨居先生は老人や老婆、傷病兵と、重い主題に取り組んだ作品を発表していた。私は、どんな私が出来るのかしらと、いろいろ想像しながら座っていた。出来た作品には私の特徴が良く出ている素晴らしいデッサンだった。「僕だって普通の女性を描けるんですよ。ただ師匠の宮本三郎に似てしまうようで、あえて発表しないんです」自分だけの絵の世界を作る画家だけあって、単に上手な作品は描きたくないのだろう。

荻 太郎 「長谷川智恵子像」 1974年

出来た作品は私の背の大きさも出ていて素晴らしかった。もともと、荻先生の描かれる女性像は私に雰囲気が似ていると友人の画商から言われたことがある。ちょっと自慢すると先生向きのモデルだったのかもしれない。

梅原 龍三郎 「H夫人像」 1975年

先生は煙草をよく吸われ、それもフィルターのない強い煙草がお好みだった。絵を描きながら、くわえ煙草でチェーン・スモーカーである。洋服に灰がはらはらと落ちても気になさらない。こちらが心配してしまう。一枚目が済むとウィスキーを一杯飲まれた。先生の飲み方は氷も水も入れない。ウィスキーをコップに「どぼどぼ」と入れて飲まれる。

ジャコモ・マンズー「 C夫人像」 1979年

マンズーは帽子をかぶって上着を着て、制作に熱中している。私は息詰まるような緊張と興奮を感じていた。「私の肖像彫刻のレコードは十四分だった」というマンズーは手先の動きが速い。粘土を手で形作っていく。居間で歩き回っていた時に構想を練っていたのだろう。粘土に向かうと早い。約一時間で終わった。

福井 良之助 「H婦人像」 1980年

気に入っている黒地に金の地模様に四季の花の描かれている着物を持参した。「僕は雰囲気を描くのだから気楽にしていていいよ」と言われるが、着物を着てモデルになっているという普段と違う状況もある。それと、いつもニコニコと冗談を言っておられる先生が真剣な眼差しで私を凝視しておられる。緊張しないほうがおかしい。

筧 本生 「牡蠣を食べるマダム」 2002年

筧先生とは牡蠣を食べにご一緒したことが多かったように思う。私は牡蠣が大好物で冬のパリでは必ず食べることにしている。それも結構たくさん食べる。むさぼり食べている私を先生はじっと観察しておられたのかもしれない。作品は筧先生らしい作品になっており、かつ、まぎれもない私の肖像画だった。

『音楽の彩り マティス(ジャズ)&ホックニー(ブルー・ギター)』 出品作品

アンリ・マティス 「ジャズ」 1947年 ステンシル 20点
デイヴィッド・ホックニー 「ブルー・ギター」 1976−77年 エッチング 20点


木下孝則 「花嫁像」 1964年

鴨居 玲 「長谷川智恵子像」 1972年

荻 太郎 「長谷川智恵子像」 1974年

ジャコモ・マンズー 「C夫人像」 1979年

福井良之助 「H婦人像」 1980年

筧 本生 「牡蠣を食べるマダム」 2002年